<お役立ち情報> 配線器具の劣化診断や更新時期について
電気設備というと何か複雑で難しいように感じるかも知れません。
その電気設備の中でも照明器具や配線器具はみなさんにとっても身近なものだと思います。
今回は、みなさんが毎日の生活で使用されているそんな配線器具の劣化や更新についてのお話ししたいと思います。
照明器具については水俣条約に伴う蛍光灯の生産禁止や省エネの観点からLED器具への更新が進められていると思います。
しかし、スイッチやコンセントといった配線器具については改修工事やリフォームをしないかぎりは古いものを使い続けられている事が多いです。
それでは、配線器具の寿命は何年くらいなのでしょうか?
各電設メーカーのホームページ上では寿命について明確に何年と謳われていませんが、
点検の目安として【10年】とされています。
それでは点検とは何のために必要で、具体的にどんな点検が必要なのでしょうか?
まずスイッチですが、スイッチは指でON/OFFの操作をするたびに内部の機械的動作により
電気的接点がくっついたり離れたりして対象器具の運転状態を制御する部品です。
長年使用していると何千回、何万回と動作しているわけですから、金属疲労や摩耗が発生しています。
ただ、だからといって電気火災などがただちに発生する危険性は低く、
問題となるのは上記のような経年劣化によりスイッチの機能を果たさなくなる場合がある事です。
具体的には、スイッチはパチッと押せるけど照明が点灯しないだとか、
スイッチを押そうとしてもパチッと押せずスカッとかヌルッの様な感触で照明が点灯しないなどの症状です。
こういった経年劣化はスイッチ内部で進行しているため、上記の様な具体的な症状が発生する前では
プロの電気工事士が点検しても正確な診断はできません。
もし目視や簡単な点検だけで「このスイッチは古くて危険」などと言って交換を勧める業者がいたら、
詐欺とまでは言いませんが悪徳な業者である危険性があるのでお気をつけください。
続いてコンセントですが、こちらもやはり経年劣化をしていきますが、
スイッチと違うのは劣化した状態で使用を続けると電気火災が発生する恐れがあるという事です。
コンセントの劣化の大きな原因はプラグの抜き差しによる劣化です。
コンセントの差し込み部分の内部は板バネ上の受け刃となっていて、その受け刃にプラグの刃が差し込まれることによって
電気的接点がつながり、電気器具に電源が送られる仕組みになっています。
そのためプラグを抜き差しするたびに板バネが広がったり狭まったりするので、やはり金属疲労が起こります。
金属疲労が起こって板バネが弱まったりすると、コンセント側の受け刃とプラグの刃の接触圧が弱くなります。
接触圧が弱いと電気的に接触抵抗というものが発生し発熱の原因となり、最悪の場合電気火災に繋がってしまいます。
こういったコンセントの劣化状態については点検により発見する事が可能です。
過度な発熱が発生したコンセントは差し込み部分や裏側の電線接続部分が黒色になっています。
これは発熱によりカーボン(炭化)が発生している証拠で危険な状態です。 また酷い場合は電線の被覆が熱で溶けていることもあります。
この様な状態のコンセントは電気的な絶縁抵抗も低下している恐れがあるので早急な交換をお勧めします。
また、タコ足配線などによりコンセントの許容電流をオーバーして使用している場合も同様の症状になりますのでご注意ください。
一般的な100Vのコンセントの許容電流は15Aで、ワット数に換算すると1500Wとなります。
1箇所のコンセントに合計で1500W以上となる電気器具等を接続して使用しないようお気をつけください。
ここからは簡単ですが配線器具の変遷をご紹介したいと思います。(Panasonicより)
1950年代にはまだ埋込型の配線器具がなく、すべて露出型の配線器具が使われていました。
1961年にPanasonic(当時の商標はナショナル)が埋込型の配線器具であるハイ角連用器具を発売し広く普及させました。
電気工事士はハイ角連用を略してハイ連と呼んでおり、今でも更新工事の際に見かけることがあります。
電線を接続する部分がネジ締め式のため緩みが生じたり、充電部が露出している部分があり感電や地絡の恐れがあるので工事の際には注意が必要でした。
しかしレトロ風な建物に合うデザインの配線器具なので今でも需要があるようです。
もし状態のいい中古品や新品・未使用品を持っていたら高値で売れるかもしれませんよ。
1971年にPanasonicがフルカラー配線器具を発売しました。
配線器具を従来より大型化する事と、電線の接続方法をネジ締め式から差し込むだけで接続できる
フル端子式に変更することで、工事の施工性や効率化が一気にすすみました。
また消灯時に小さなランプが点灯しスイッチの位置を知らせるほたるスイッチや、タイマ付スイッチなどの高機能スイッチがラインナップされました。
2000年 Panasonicはワンプッシュで確実に反応する優れた操作性とすっきりしたデザインを両立したコスモワイド21シリーズを発売。
また2014年発売のADVNCEシリーズでは、スマホやタブレットにインストールした専用アプリからON/OFF操作や調光コントロールを可能とし、
2017年に発売したクラシックシリーズでは、前述で紹介した[ハイ連]を連想させるレトロ風なラインナップが登場しました。
私も自宅にクラシックシリーズを採用したいと思い調べたことがあったのですが、これは設計ミスなんじゃないかと思うほどの欠点があるんです。
クラシックシリーズ以外のスイッチは1連で最大3個のスイッチを取り付ける事ができるんですが、
クラシックシリーズは…なんと! 1連に1個のスイッチしか取付できないんです。(上の写真ご参照ください)
そう、既存で1連3個のスイッチをクラシックシリーズに変更したい場合、壁の開口を3連に広げるしかないんですね。
いやぁパナさん…それはね……そこまではしないですよ…スイッチリニューアルするだけで開口広げますか?…いや 絶対しないですよ それは…。
現状だと新築やフルリノベーション限定でしか提案できないんです。 ハイ連みたくスイッチ横向けて3個付けられるようにしましょうよ。
そしたら買いたい人きっと増えますよ! ねっパナさん ご検討ください。(私的な願望も多分に含みます!)
以上、配線器具の劣化やその危険性と配線器具の歴史を紹介させていただきました。
電気は今や生活に欠かせない身近なエネルギーですが、電気設備は適切に更新して安全な状態を保ったり、
正しい使い方を守らないと感電や火災などの事故につながる恐れがあります。
点検や更新には電気工事士の資格が必要なことと、知識をもったうえで作業しないと危険なことから、
ご自身では行わず、必ず電気工事会社にご相談されるようお願いします。